鯛のドンブリ打ち

海釣りで初めて鯛を大漁に釣った時の話です。2〜3年前にアンカーを入れてアジ・サバを釣っていた時、海が急に時化てきて船首部分が大きく上下するピッチングを繰り返していました。時化はますます強まり風が弱まりそうにないので帰ろうと思った時、急に鯛が入れ食い状態になりました。その時、水深40メートルのところで、25メートルくらいに仕掛けが下りた時、竿先に当たりがあり鯛が釣れるのです。鯛の入れ食い状態は初めての経験で、なぜ急に鯛が入れ食いになったのか不思議に思っていました。そして、この時に経験したことが「1本釣り渡世」(石橋宗吉著)を読んでピンときました。

その本を引用すると、14、15隻の仲間船で操業していたが、突然、仲間同士の喧嘩が始まりたちまち石の投げ合いとなった。そのうちの一隻が喧嘩の場から離れた、それでも船の周辺に石がどんどん落ちてきた。石が沈むたびに泡が湧く。とたんに鯛が釣れだした。不思議なことよ。これに仲間が気が付いた。喧嘩は休戦で一斉に釣り始めた。すると鯛の食いがピタリと止んだ。これまた不思議であった。この原理から釣り船・飛翔のアンカーロープがこの石の変わりで、船首が上下することでロープは水を切りシューシューという音ともに小さな泡を湧かせます。そこに鯛が群れたのです。ダブル、トリプルで釣れ、鯛の背に針がかかる等たちまちのうちに鯛で一杯になりました。

鯛を集めるドンブリ釣り

本によると、毎日、漁船にたくさんの石を積んでいけないので、鉛のドンブリが考案されたそうです。泡がたくさんでるように中をくり抜いた釣鐘型の鉛に10メートルのロープを結び、船のおもてに立ってよっこいしょと肩に担ぎ、水面に直角になるように振り下ろす。ドブンと音を発して鉛は沈み、水中から白い泡がもうもうと立ち昇る。これを引き上げては再び打ち込む。水中が泡立つと鯛は底を離れ中層まで浮上してくる。そこで餌のついた道具を入れて鯛を釣り上げるそうです。

私は偶然遭遇した時化で、ドンブリ釣りの威力を試すことができました。もう一度あの時の鯛の大漁をドンブリで試してみたいと思います。「1本釣り渡世」の著者石橋宗吉氏ら房総・勝浦の漁民3人は、ドンブリの効果と、鯛はなぜドンブリに反応するのか東大の末広泰雄博士から質問を受けたそうです。ドンブリ発案者の人は、泡が鯛を誘致すると泡説、また他の人はボコを叩き込んだ時の音が鯛を呼ぶと音説ではないだろうかと推測されたそうです。

鯛が集まるハミ説

石橋氏の説は、マグロやブリに襲われたイワシの群れが進退極まって水面下で団子状のかたまりになる。その一部は海面上に盛り上がることもある。これがハミだそうです。(私の住んでいる山口県ではナブラと言っています)ハミはハモノ(襲う魚)に食べられ、食いちがられた魚片が海底へ落ちていく。そこで、ハミができると鯛はハミの下へ集まってくる。ハミが八方から襲われ海中が泡立ち、ばしゃばしゃ、かぽかぽという音が底まで伝わってくる。同時に上からご馳走が降ってくる。

それっ、と降ってくるご馳走目指して鯛は中層まで舞い上がる。従ってボコに反応するのはハミのご馳走を知っている鯛に限られる。濡れ手に粟の経験をした鯛である。ハミは毎日できるものではない。そこでハミに似せた状態を人工的に作りだす。これがボコの原理であると末広博士に言われたそうです。三者が泡、音、ハミのご馳走説をとなえて興味深い内容です。ハミ=ナブラは、瀬戸内海でよく見かける光景です。ヤズやハマチがイワシの群れを襲ってバシャバシャ、カポカポと大きな音をたてて海面を波立ったせています。犠牲となったイワシのご馳走は、魚だけでなく海鳥が空から狙い、ナブラには鳥も群れています。

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